三重県女性起業家コミュニティ【wiz:】主催による座談会
第一弾の今回は、Wiz実行委員会の高原祥子さんをモデレーター、伊藤和歌子さんをサポーターに加え、三重県津市にある花屋「樹花(いつきはな)工房」の下里美樹さんにインタビュー!
花屋をはじめて24年目の美樹さんに、これまでの事業運営における成功・失敗談についてじっくりとお話を伺います。
後 編
ファンづくりはSNSの情報発信も活用
高原:
それは「好きだからやれる」のでしょうし、「お仕事がたくさんある」からそれだけ時間を使っていらっしゃる。仕事があるということはつまり、美樹さんのお店のファンもすごく多いのだと思います。SNSでもライブ配信していらっしゃいますね。投稿などはどれくらいの頻度で?
下里:
ライブは適宜。投稿は、基本的に休業日を除く週6日です。7~8年前、「営業日のなるべく午前中に1本投稿するといいよ」という話を聞いて、それから実践しています。1日1人、1週間に3人といった形で徐々にフォロワーが増えています。
高原:
毎日続けることで、少しずつフォロワーが増えていくってすごいことですよね。SNSは、一気にドカンとフォロワーが増えない中でコツコツと投稿し続けるのは大変!すぐに目に見える成果が出ないと、やり続けるモチベーション維持が難しいですね。
下里:
なぜ午前中、お昼までかの理由は、ランチの時に投稿を見る方が多いからです。午前中に一投稿あげておくと、見てくださる確率が高いと聞き、できるだけ取り組んでいます。
高原:
美樹さんがアレンジを作っていく動画、面白いですよね。
下里:
私の場合、Facebookには全国につながっている友達がいて、インスタは近くの方が多いのです。Facebookでは遠方に向けて、「こういうの作っています」と案内すると喜んでくださいます。遠いからなかなか会えないですし、何をしてるかの報告みたいな形で。
動画は、大きいものや複数のアレンジメントを作る際に撮っています。長めの動画にしておくと、途中からでも後からでも、残しておけばいろんな方が見れるのではと思って。
フォロワーを増やすのが目標ではなく、毎日続ける習慣を作ることを目標にすると、感情に流されず続けられる…。動画は遠くの方へのおたより、と思うと続く…。
伊藤:
今季、大忙しかった美樹さん。これまでにすごくファンづくりをしたと思うんです。けれど、戦略的、目的目標から入っていなくて、結果的に見るときちんとそこに正しく乗っていたという(笑)。
淡々と続けるということは、意外とできないんですよね。
下里:
自分でも楽しみのひとつなんです。「こういうのを作ったからちょっと見てほしい」という思いもありますし、どんなものを作っているのかわかってもらえると、皆さん注文しやすいのではとも思います。それもあって、説明や一言を添えて投稿しています。
高原:
「午前中に投稿上げたらいいよ」「ランチタイムに見てくれるから」。それは美樹さんのお店のお客様たち、つまり客層がそこにあるからその時間がいいのでしょうね。
で、皆さんのお客様になってほしい人たちは「どの時間にSNSを見るのか」を考えて投稿するのはすごく重要だと思いました。
伊藤:
東京インテリアの話も、SNSを見ていらっしゃったのでしょうか?
下里:
名古屋の市場からの依頼でした。それは大きな仕事内容で、二段のスタンド花を32本!その話を聞いてまず思ったのが、それほどたくさんのスタンド花を作ったことがないから一生に一度作ってみたいと。2月25日オープンでしたので、季節的にもできるかなと思いました。
高原:
完全に人脈のつながりだったんですね!
下里:
季節のお花ではなくいつもある花で、派手なものをというご依頼で、少し悩みました。けれど、それだけの量を一生に一度でも、今後作ることがあるのかと考えて。きっと楽しいだろうなと思って引き受けました。
高原:
で、必要な量の倍の花を仕入れたそうですね!
下里:
2段分で計算していて、それを1個として頼めばよかったところを「2段だから2倍だな」と思って頼んでしまいました。
高原:
そんなハプニングのあと「お花がたくさんあります」と投稿されて、ほぼ全部売れたそうですね。
下里:
はい。小さいブーケや、そのまま花瓶にいけられるようにしたものを「良かったらお願いします」と。投稿したのはInstagramです。近くの方、例えば津市や鈴鹿、伊勢近辺まではInstagramで、それより遠い方々にはFacebookを普段使っています。
伊藤:
ファンづくりは、近隣にはInstagram、遠方にはFacebookなんですね。
高原:
美樹さんのお店に今たくさんのファンがいらっしゃるのは、まず一つは労働時間。あと、人が辞めたけれども雇わずにご自身たちでできるところをやっていらっしゃる。あとは、コツコツ毎日SNSを投稿されて、地道に地域のファンの方を作られた。
この三つがすごく大きかったのではと思います。この他に和歌子さんありますか?
伊藤:
美樹さん自身、ファンづくりの戦略はないんですよね(笑)。私が見て思ったのは、やはり接近戦です。ランチェスターでいう「弱者の戦略」。接近戦と、接触回数がすごく大事で。
まず接近戦とは、スタッフがいなくなって美樹さんがずっとお店にいるように転換したことで、お客様に直接接近戦ができるようになったということです。
その中で美樹さんがすごいのは、例えば「お墓に持っていくお花を作ってください」と言われた場合、「どういう方でしたか」「どういうシチュエーションでしたか」「どういう色が好きでしたか」というのを、必ず聞いているようなのです。そこまで聞かない花屋さんも多い中、他との差別化になっている!ご本人は気づいていませんが(笑)。
また接触回数については、同じお客様には3ヶ月に1回は必ず接触しないと忘れられるといわれます。そこで美樹さんはSNSをとてもうまく活用されていると思いました。お客様からすれば、美樹さんの顔がSNSにどんと上がってくると、それでもう1回の接触になります。
花というよりも商品の戦略でいくと、商品はアレンジメントが多分一番人気があると思いますが、商品は美樹さんのセンスですね。センスを形にしているのがお花なので。
センスと美樹さんのアップの顔!Instagramの動画のアップ、なかなか勇気がいりますが、それを深く考えずにやっている「素直さ」が成功の秘訣なのだと思います。
高原:
ありがとうございます。花屋さんは大々的にキャンペーンなどをすることも少ない中、お客様がその花屋さんを選んでいらっしゃるわけです。今回店舗2階でインタビューさせていただいていますが、私が伺ってからも続々と1階にお客様が見えたり、電話で注文が入ったり、ひっきりなしで!
「美樹さんが好きなもの」を妥協せずお店に置いてらっしゃる、そこに共感した方々が注文にいらっしゃっているのかなと感じます。
下里:
今日のお客様の中で、少し前からガーデニングをしていて、鉢に花を植えるという話をされていました。今流行している植え方があるのですが、「それだとやっぱり長持ちしないですよね」と私に聞いてきたのです。やり方を聞いてみると「それは絶対長持ちしない!」と。
お花は衣食住に欠かせないものではありません。なので、私はなるべく長持ちさせたい、長持ちすればその払った分の価値があると思ってもらえるのではないかと。私はなるべく長持ちする方法をお伝えするようにしています。
他には、まず植物の写真を送って欲しいとお客様に伝えています。電話で話していて「植物は何ですか」と聞いて名前がわからないと、答えることもできません。写真を見たら、大体がわかります。そこで方法をお伝えして、またどうなったか教えてくださいとご案内する。すると大体いいお返事が返ってくるのです。
すぐには返せないかもしれませんが、遠慮なしに送ってくださいねとご案内しています。
高原:
すごいですね!お花のお医者さんみたいな。
下里:
誰に教えてもらったらいいかわかりませんよね。私の場合、長く育てた経験もあるので、「こうしたら枯れる」「長持ちする」「少し移動させたらよく育つ」「お水のあげ方」など、お伝えできることはあります。
私自身もとても勉強になるので、お客様と向き合って、「こうやって伝えたら上手くやってもらえるかな」と思いながら。
高原:
お花を語るときの美樹さんは、急にスイッチが入ったようにピシッとなりますね。そういうスイッチ、「皆さんはどこでしょう?」という話なのですよね。
別に資格がなくても構わないし、何でもいいと思います。今の美樹さんのように、花について語る感じで人に語りたいことって何だろう。それを見つけていただくと、多分それが今の美樹さんの「花」のように、自分が長く続けられる仕事になるのではないでしょうか。
専門知識も豊富で、それをきちんと人に伝えようという責任感、お花を好きになってくれたらいいなという気持ちがあるから、多分みんな美樹さんのお店を好きなのだと、そう思います。
今回はインタビューさせていただきありがとうございました!
(構成) 杉本友美(ライティングファーム紡)
桑名市出身&在住。バックオフィスでの社会人経験ののち、ライターに転身。
働き方関連や三重などを中心としたライティングに携わる。
HP:https://www.wf-t.jp/ Instagram:@writingfirm.tsumugi