三重県女性起業家コミュニティ【wiz:】主催による座談会

第一弾の今回は、Wiz実行委員会の高原祥子さんをモデレーター、伊藤和歌子さんをサポーターに加え、三重県津市にある花屋「樹花(いつきはな)工房」の下里美樹さんにインタビュー!

花屋をはじめて24年目の美樹さんに、これまでの事業運営における成功・失敗談についてじっくりとお話を伺います。

座談会参加者プロフィール

下里美樹(しもさと みき)

三重県津市の三重県文化センター近くにある「樹花工房」代表。大阪の園芸専門学校を卒業後、生花店勤務を経て松阪市にて花屋をオープン。その後同松阪市内に移転ののち、現在の津市へ移転。店内の装いは確かなセンスが光り、平日にお客様が列をなすことも。InstagramやFacebookでの動画・写真の投稿にも要注目。

伊藤和歌子(いとうわかこ)

株式会社アンリ代表。「頑張っている女性の心に元気を届ける」をミッションに、津市・鈴鹿市で「エステ&ネイルサロンアンリ」を運営。開業から22年目を迎える。2022年春にはアンリ鈴鹿店1階にフリーレンタルスペース、レンタルサロン、ばんじょう整体が入る「自由空間anriplus」をオープン。

高原祥子(たかはらしょうこ)

株式会社サンプラス/高原社会保険労務士事務所。大学卒業後、ベネッセコーポレーションにて教育事業に携わる。3人目の子どもの出産時に退職し、社会保険労務士業をスタート。津市をはじめ三重県内での創業支援および各種講演の講師として活動。また「テラコヤWILL」では子どもの教育と向き合う。

前編

下里美樹さん(以下、下里):

「樹花工房」を営んでおります下里です。本日はよろしくお願いします。

伊藤和歌子さん(以下、伊藤):

Wizの実行委員会メンバーをさせていただいております伊藤です。今回は私の思いつき企画!Wizの中で「情報」「交流」「学び」を配信して皆で共有していけたらなと考えており、今回はそのうちの「学び」です。

座談会初開催ということで、美樹さんに業績アップのヒントを教えていただけたらなと思っています!どうぞよろしくお願いします。

高原祥子さん(以下、高原):

Wizの実行委員会メンバーの高原です。本日はよろしくお願いします。

幼いころからの「好き」がきっかけ

高原:

早速ですが、まずなぜ「花屋さんなの?」というところから。お花と美樹さんのつながりについて教えてください。

下里:

私の父は登山家で、幼いころからいろいろな山に連れて行ってもらっていました。そんな中、キャンプをはじめ自然に触れる機会がとても多かったように思います。山にはさまざまな植物があって、風景を見るのも大好きでした。植物を買ってきて育てたり飾ったり、普段から植物が生活の中に溶け込んでいたんです。

私が高校3年生となり進路に迷う中、大阪の園芸専門学校に入学させてもらうことになりました。そこであらゆる植物や花について勉強したことが、今につながっています。

高原:

お花と美樹さんは小さいころから切っても切れない関係だったんですね。最初にお店をオープンされたのは松阪市だったとか。

下里:

その店舗には元々ブティックがあり、私はお花を生けに定期的に出入りしていました。けれど、移転するから居抜きで使わないかと言われたんです。この話を聞いた当時私は24歳!当時は大きな資金もなく、まずはこの場所を活かすことを考えて、少しずつリフォームしながら3年ほど花屋を開いていました。そこから別の松阪市内の店舗に移り、現在は自宅が近い津市に移転したのです。

高原:

「お店をやるから物件を探す」ではなく、「ここが空くからどう?」という話から出店されたのですね。そのあと移転、そして今の店舗に。

下里:

今の店舗は自ら探して移転しました。

起業において「立地選び」は重要!

高原:

ご実家が近いということ以外で、今の店舗に移転する決め手は何だったのでしょう?

下里:

今でこそいろいろなお店がありますが、この場所(総合文化センターと県立美術館の間)には元々何もなかったのです。車通りに面していて総合文化センターが近いという「立地の良さ」もあり、移転を決めました。

伊藤:

立地は大事ですね!生活にゆとりのある方がいらっしゃるところも◎。例えば飲食店の成功は「立地が80%」といわれます。店舗前の道が少しカーブしているのも◎。カーブにさしかかっているところは速度がゆるやかになるので、車も自然と入りやすいとされています。

高原:

樹花工房の店内はとても素敵!お店にいらっしゃった皆さんが同じように仰います。お店作りで気を付けていることや「こんなお店にしていきたい」というイメージはありますか?

下里:

お店作りの際、気を付けているというよりは「季節のお花がいいな」「好きな花を扱いたいな」この二つです。

花は基本的に自然から生まれているものなので、季節のものだと思っています。それに加えて、自分がいて「心地いい場所にしたかった」ことも大事。父に長野県の軽井沢に連れて行ってもらったとき「こんな風にしたいな」と強く思いました。緑がいっぱいの中にお店があって…。

高原:

美樹さんの「好き」と「心地いい」があふれているお店なのですね。

伊藤:

イメージ力は大切!軽井沢に行ったことで脳内に残っているんでしょうね、「こうやりたい」というイメージが。だから、最初のうちはきっといろんなところに見に行くのも勉強のひとつ。

下里:

そうですね!私は松阪市で花屋を始めてからもう24年目です。20年前くらいまではあちこち行かせていただいていました。

高原:

何か作っていくときに、自分の「好き」ももちろん大事ですが、なるべく数多くの事例を見に行くことも、大事なのでしょうね。

下里:

ただ、他店へ行くことで「偵察」と思われることもあるようです。私の場合、松阪市にお店を持っていた時に他の花屋さんもいらっしゃっていたんですね。若い子たちをはじめ、勉強したいならしたらいいと思って。私はわからないことがあれば聞いてほしいと思っています。

伊藤:

同業者と仲良くできる経営者は成功すると思います!

必要な情報を、届けたい思いを大切に

高原:

新型コロナウイルス前のお店の状況はどうでしたか?

下里:

まず第一波の2020年3月、4月くらいは、軒並み全部キャンセルになりました。卒業式の開催状況も不安定で、三重県文化センターのイベント関連もなくなって。

樹花工房ではずっと個人のお客様を大切にしながら営業させていただいていました。なのでもう「どうなるのかな」と不安でしたが、5月には母の日があって。当時は周りの花屋さんも密を避けて土日は店を閉める、予約注文しか受け付けないという店もありました。テレビでも、花がすごく余って…という情報も流れていたようです。

けれど、私は普段からあまりテレビを見ていなくて…。おかげで娘との時間が持てましたし、あとはお客様のためにできることを考えていました。

伊藤:

情報量は少ないほうが成功する!ネガティブな情報に引っ張られてしまうこともありますから。

高原:

正しい情報を仕入れたい!と思ってあれもこれも調べたくなりますが、本当に自分の身の回りで何が起きているのかわかっておけば。逆に調べすぎて、迷宮に迷い込んでいくこともありますし…。

下里:

その当時いろんな情報が出ていたと思いますが、私たちには何もできないから、「お花を売ってお客様に喜んでもらうだけ」だと思っていました。それは何が起ころうと、ずっと変わらないですね。

高原:

母の日はいつも通り普通だったのですか?

下里:

周りの花屋さんが閉めたこともあって、その年の母の日の売上はかなりありました。私自身、こんな時だからこそお母さんに花を贈ってほしいと思っていたんです。郵送でもいいし、気持ちを伝えるだけでも…そんな思いでした。

高原:

新型コロナウイルスの前後、それまでいらっしゃった従業員さんが何人か退職されたそうですね。そのとき美樹さんはどうされました?

下里:

2020年の夏、元々3人だったのが6月に1人、7月末に2人と急に退職されました。7月末で退職した方は10年近く働いてくれていたのですが、このままやれるだけ自分でやろうかなと考えました。母もいますし、主人の仕事も落ち着くタイミングもあって、家族でやってみようかと。

高原:

これは美樹さんにとって、樹花工房にとって、大きなターニングポイントだったのかもしれませんね。

新型コロナウイルスと樹花工房

高原:

新型コロナウイルスによっていろいろとキャンセルになる中、娘さんとの時間もつくれたとのこと。とはいえ、子育てしながら忙しく働いていらっしゃったと思います。基本、朝から仕事をはじめて、何時くらいまで?

下里:

私すごく手が早いので(笑)、それほど時間がかからないのです。店頭は6時まで営業で、8時9時くらいまでは何かしら作業しています。好きな仕事なので、それほど苦になることはないですね。

伊藤:

花屋さんは仕入もありますよね。

下里:

仕入の日は朝3時に津市を出て、名古屋には4時くらいに着きます。その時間に市場が開くので、花を仕入れて帰ってきて。大体娘が7時半ぐらいに家を出るので、それまでに帰ってきます。週1、2回は仕入の日がありますね。

伊藤:
労働時間戦略を考えたとき、サラリーマンは年間1,850時間といわれる中、計算すると美樹さんは多分年間3,200時間くらい!

私たち女性は家事や育児を兼ねている人も多いですよね。私で年間1,800時間くらいです。中小企業の社長の必勝時間、3,200時間と言われる中、美樹さんは確実にそうなっています!ちなみにビルゲイツは5,500時間を5年続けて世界一になりました。

高原:

私は社労士なので、「少しでも労働時間を短くしましょう」「その中で1日当たりの生産性を上げましょう」とお話しさせていただきます。世の中のトレンドとしては、短い時間で効率的に成果を上げるほうを求めてはいるものの、やはり時間をかけるべきときもありますね。

伊藤:

起業の時は集中したほうがいいのでしょうね。

(構成) 杉本友美(ライティングファーム紡)
桑名市出身&在住。バックオフィスでの社会人経験ののち、ライターに転身。
働き方関連や三重などを中心としたライティングに携わる。
HP:https://www.wf-t.jp/  Instagram:@writingfirm.tsumugi