Wiz:の実行委員会メンバーでありMie起業支援室メンバーでもある、社会保険労務士の高原祥子さん。津市ビジネスサポートセンター専門家として女性の起業相談実績も豊富で、「働く」ことに関して多くの女性から信頼を寄せられる存在です。

今回は社会保険労務士の仕事をはじめ、これまでのキャリアや「働く」「学ぶ」に関してお話を伺いました。後編では、社労士事務所開業時の奮闘エピソード、人が生きる上で働くこと、学ぶことの大切さについてまとめています。

 

開業する時に発揮した自分の強みとは?

 

―育休期間に資格を取得されて!それで社労士で開業しようと決めたのですね。

そうなのです。ただ、当時の私は、社労士としての経験も、人脈も、お金もない、「全部ない開業」でした。社労士事務所で修行をしてから独立開業というケースが多いですが、私は「自分で時間の使い方を決めて、自分のできる範囲で仕事をしていこう」と、手探りで始めることにしました。

スタートした当初はものすごく怖かったです。右も左も分からず、聞ける人もいない。正解がわからない中で、本やネットで情報を得ながら、少しずつ動いていきました。そんな状況がしばらく続きましたが、ご案内をお送りした企業から問い合わせがあったり、友人の会社から就業規則の相談をされたり。

「スタッフが10人になったから就業規則作りたいんだけど…」「マイナンバーについて研修で話してくれる人を探してるんだけど、できる?」「メッセナゴヤで、ワークライフバランスのセミナー、話してみない?」などのお話をいただいた時、「できません」ではなく「やったことはありませんが、やらせてください。」とチャレンジできたことは、自分の強みだと思っています。

同じ社労士の先輩方にたくさん教えていただいたり、機会をいただいたりして、とてもありがたかったです。

 

生きることは「学ぶ」「働く」の両輪で

 

―人が生きる上で、「働く」だけでなく「学ぶ」ことも大切だとおっしゃっています。

ベネッセ時代の経験と、社労士としての活動の中で、「学ぶ」ことの大切さを強く感じています。子どもの時は、「勉強は嫌なもの、やらなくちゃいけないもの」と思っていましたが、知らないことを知るのは楽しいし、できないことができるようになるのは嬉しいこと。

そして、勉強は子どもだけのものではない。大人の中にも、学び続けている人と、そうでない人がいます。

地域の子どもたちが、自分の視野を広げて、学ぶことの楽しさを感じられる場所を作りたいと思って、事務所の一部屋で、毎週木曜日に小学生向けの「テラコヤ」事業をしています。

「実は、勉強はおもしろいんだよ」「働くってすごいことなんだよ」と。「ありがとう」と言われて、しかもお金がもらえるなんて、幸せなことですよね。

子どもって仕事に対して興味津々。子ども達が働くことについて知りたい、聞きたいと思っていても、身近にいる大人が「働くのは嫌だ」「会社に行きたくない」と言っていたら、働く=楽しくないこと、お金を稼ぐには我慢をして嫌なことをするしかない、というイメージが定着してしまう。大人が「仕事は、大変なことも多いけど、めっちゃ楽しいよ!」って言えば、きっと子ども達の仕事観もポジティブになるのではないでしょうか。

テラコヤでは、「家庭での学習習慣」に加えて、「受け身ではない生き方」「自分で考える」「自分で決めて行動する」をメインテーマに、みんなで一緒に話をしたり、作文を書いたり、絵を描いたりしています。

 

仕事をするうえで大切にしていること~楽しく心地よく働くために~

 

―高原さんは社労士を「時代に求められている職業」だと感じるそうですね。

社労士は、経営者と働く人をつなぐ存在だと思います。今、日本で起きている「少子化」は、男性と女性の働き方と直結した問題。そのため、働き方や育児介護との両立支援等に関する法律が毎年改正されています。

最新の法律に対応しつつ、働きやすくて働きがいのある職場を作ることが大切で、経営者・従業員の両方にとって心地良い職場環境になるようお手伝いするのが、社労士の役割です。

 

―今後も楽しく働いていくため、大切にしたいことは?

国内約2万人を対象にしたあるアンケート結果によると、幸福度に与える影響力は健康、人間関係に次いで「自己決定」が強い影響力を持つのだそうです。

 

(参照:神戸大学|所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査)

https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html

 

簡単に言うと、「人から言われたことをやる」「人に決められる」ではなく、「自分で選んで自分で決めている」と思うことができるかどうか。

私自身、自分の生き方や働き方をあれこれ模索して、必死にもがいた結果、今の働き方に辿り着きました。まだまだ経験不足なところも多く、もっと進化が必要ですが、「自分で決めている」ことには充実感を感じています。

これからも、「勤める」人や「起業する」人が、「楽しくはたらく」「自分で生き方や働き方を決める」ことのお手伝いができれば、こんなに幸せなことはありません。

 

 

(取材・構成) 杉本友美(ライティングファーム紡)
桑名市出身&在住。バックオフィスでの社会人経験ののち、ライターに転身。
働き方関連や三重などを中心としたライティングに携わる。
HP:https://www.wf-t.jp/  Instagram:@writingfirm.tsumugi