御在所岳のふもと、菰野町で「季節ごはん教室niwacoya」を主宰する柵山咲子さん。OLから料理の道へ転身し、「予約が取れない」人気の料理講師として、三重の食材を使った食レシピプロデューサーとして、いくつもの顔を持つ「食」のプロフェッショナルとしてご活躍中です。
そんな柵山さんに、これまでの歩みから料理講師としての思い、地域貢献についてお伺いしました。後編では、女性の起業、特におうち教室や食プロデューサーへの思い、今後の展望についてまとめています。
起業して個人でやっていくために必要なことは??
―おうち教室の講師として働く魅力は?
時間的な自由がきくことです。例えば子供たちが夏休みや冬休みの時、おうち教室なら自分の裁量で閉めることができます。過去に一度だけですが、子どもがインフルエンザで熱を出した時にお休みしました。「休める」という保険があるのは大きいですね。
「いつでも休める」というと考えが甘いんですが、本当におうち教室なんで。お客様のキャンセルでも材料費以外のお金はいただきませんし、それは「私がキャンセルするときもあるよ」っていう条件で。子育てしながら自由がきくのは、いまだに大きなメリットだと思います。
―個人でやっていくことの大変さはどんなこと?
苦労とは少し違うかもしれませんが、私の趣味は本当に料理しかないんです。なので、仕事が料理で、リラックスするのも料理。だからオンオフの切り替えができない…。
最初に料理教室を始めた頃は、自宅の台所を使っていたんです。2018年から今の「アトリエ」と呼んでいる場所を使っていますが、自宅の敷地内ですからオンオフごちゃごちゃ。「好き」を仕事にしたがゆえの…ですね笑。
―個人でおうち教室を始めるにあたって手続き関連とか、実際にやっておいたこと、やっておくと良いことはありますか?
私の場合、まず保健所に電話して飲食業の営業許可など確認し、開業届を提出して会計関連をきちんとしておこうと思いました。
やっておくと良いのは、まず一番は家族の理解を得ておくこと。自宅だと、例えば台所だけ使うといっても、トイレや洗面台など家族が使うスペースを共用するわけです。
料理に限らず、例えばピアノ教室や英会話教室とかでも、一室まるっと使うことになります。プライベートな空間に他人が入ることへの理解を得ておく。自宅で行なう以上、家族の理解が一番大事なのかな、と。
食レシピプロデューサーの活動も増えて~三重の魅力を知ってほしい~
ー料理講師以外に、レシピ開発にも携わっているとお伺いしました。
ありがたいことに、ご紹介を通じてレシピ開発もさせていただいています。私の中では「料理講師だけ」という意識はなくて、地域貢献の一つに「レシピ開発」があります。
食レシピプロデューサーとしてはまだまだこれからですが、積極的に取り組んでいきたいことの一つです。
―料理講師としての地盤や安心感があるのでしょうね。
料理に限らず一つのことを長く続けるのは「信頼」につながるのかな、とは思います。例えばマルシェも2009年にスタートし、コロナなどで開催できなかった年もありますが、今も活動は継続しています。
やり始めるのは簡単ですが、続けるほうがはるかに難しい。継続は信頼につながるなと感じますね。蓄積されるというか。あとは紹介してくださる方が「柵山さんだったらいいんじゃない?」と考えてくださったわけなので、その期待を裏切らないようにという想いもあります。
―三重の食材を使ったレシピ、どういった方々をイメージして開発を?
レシピ開発は、まずは今のお客様に喜んでもらえること、そしてその食材の生産者さんに喜んでもらえること。その二つの喜びを実感できる私がいるという立ち位置です。
料理講師として1対1の信頼関係も大切にしつつ、また違った切り口でチャレンジを続けられたらいいなと思いますね。お客様が喜んでくれて、企業、生産者さん、そして自分も喜びになるような、地域貢献につながればいいなと。
―柵山さんは「こもガク」のメンバーとしても活動されていらっしゃいますね。
こもガクは、町民一人ひとりが主体的に関わり「こものの未来を考え続けるために もっとこものを学ぶこと」に取り組んでいます。2017年夏から毎年「こもガク祭」を開催しています。
2020年にはこもガク塾でオンラインの料理教室、2019年にはこもガクマルシェに「chocomo」として参加するなど出店者の一人であり、そして実行委員としても活動しています。
自分たちの子どもが「菰野町っていいとこだよ」と、自分の故郷をそんな風に想ってほしい。より良い町にしていくため「食」に関してお役に立てたら嬉しいですね。
ー菰野町は「マコモダケ」の産地。柵山さんおすすめのメニューを教えてください!
簡単に作れるメニューは、生の新鮮なマコモダケをピーラーを使って裂いて、おかか醤油で頂くサラダです。この他、簡単で美味しいのは天ぷら。シャキシャキとした食感にほんのりとした甘みが、日本料理にもぴったりなんです。
今年(2021年)のこもガク祭(10月10日)では、その時期旬のマコモダケを使ったお料理などをインスタライブでお伝えいたします。良ければぜひご覧になってくださいね。
これからの展望~地域に根ざした活動に磨きをかけて~
―アフターコロナでは、料理教室の立ち位置、運営スタイルも変わってきたと思います。今後niwacoyaではどのような展開を?
niwacoyaとして…というより柵山咲子個人として、もっと三重の食材や生産者さんはじめ「三重の食」に関わりたいと思っています。食材そのものはもちろんですし、例えば地元の万古焼とか、器もそうですし。
料理講師は全国に五万といますが、その中で私は三重県にいる。それが私の存在意義だと思うので、さらに磨いていきたいですね。例えば私が取り組むことで、東京の先生に「万古焼って何?」と興味を持ってもらえるとか。おかげさまで料理講師として全国的なつながりができていますので、三重の魅力を知っていただくきっかけになります。
「三重ならとりあえず柵山さんに聞こうか」と思っていただけるように。これは料理教室というよりかは、私個人の「料理家」としての使命といえるかもしれません。
ー資格取得にも熱心な柵山さん。これまでに取得した資格や今後学びたいことは?
これまでで一番頑張って取得し、今でも仕事で大いに役立っているのは管理栄養士の国家資格です。他には「だしソムリエ1級」や「管理薬膳師」なども取得。「食」の学びを深めるために新しい知識も積極的に取り入れています。
資格取得が目的ではなく料理を体系立てて学べるので、これからもチャレンジは続けていきたいですね。今後は「温故知新」の気持ちで、日本の季節行事や和食の世界を掘り下げたいと考えています。
―柵山さんが考える「地域貢献」について教えてください。
地域の人が「自分が住む地域に誇りを持てる」そのお手伝い。例えば地域の役員をすることもそうですし。自分が何かしら行動することで「その地域いいよね」って言ってもらえたらなと。
ただ、決して私の目標が「地域貢献」ではないんです。地域のモノ、食、生産者さんとつながって、私の「料理」を掛け算する。その結果、三重県に住む人たちが自ら「三重に住んでて良かった!」「三重県っていいよね!」と思える社会づくりの一助となれば嬉しいですね。
(取材・構成) 杉本友美(ライティングファーム紡)
桑名市出身&在住。バックオフィスでの社会人経験ののち、ライターに転身。
働き方関連や三重などを中心としたライティングに携わる。
HP:https://www.wf-t.jp/ Instagram:@writingfirm.tsumugi