御在所岳のふもと、菰野町で「季節ごはん教室niwacoya」を主宰する柵山咲子さん。OLから料理の道へ転身し、「予約が取れない」人気の料理講師として、三重の食材を使った食レシピプロデューサーとして、いくつもの顔を持つ「食」のプロフェッショナルとしてご活躍中です。

そんな柵山さんに、これまでの歩みから料理講師としての思い、地域貢献についてお伺いしました。前編では「季節ごはん教室niwacoya」の予約が取れない秘密をはじめ、柵山さんのこれまでのキャリアについてまとめています。

予約が取れない!その秘密~季節ごはん教室niwacoya~

 

―リピーターが多く、なかなか予約が取れない料理教室だとお聞きしました。

ありがとうございます。現在(2021年現在)は年間通じて5月8月以外の10か月、1回完結型のレッスンを開催しています。2か月同じメニューで約130名の方にご参加いただき、その他にもイベントや単発の料理教室を開催。すべて含めると年間のべ約800名の方にご参加いただいています。

グループ単位でのご参加をはじめ、毎回コンスタントにご予約いただくことが多いですね。四日市市や菰野町、桑名市や鈴鹿市をはじめ、名古屋市や岐阜県からもお越しいただいています。

 

―リピート率が高い秘密…。何か工夫していらっしゃることはあるんですか?

本当にありがたいことです。メニューについては「こんなの作りたいな」という声も随時吸い上げつつ、お客様と講師の「1対1」の関係を大切にと心がけています。料理教室では、講師の私と数名のお客様という「1対多数」になりますが、お客様にとって講師は私一人です。

例えばお客様に対して「皆さん」ではなく、「〇〇さん」と必ず名前を呼ぶように意識しています。常日頃からお客様とLINEでやり取りして、ちょっとした相談事を受けることもありますね。料理から脱線して「いい歯医者さん知らない?」なんて話まで笑。

 

ー講師という立ち位置よりもっと身近な存在で、柵山さんの「人柄」に人が集まってくるようなイメージです。

そうだと嬉しいですね。以前全く別の業界の方に言われたのですが、「一般的に講師業って、本人は講師だと自覚しているかもしれないけれど、サービス業だよね」って。

例えばお料理の作り方を調べようと思ったら、You Tubeもあればクックパッドもあれば、料理本だってあります。今やいつでも簡単に調べられる世の中ですが、その中でもうちの料理教室を選んでいただいている。これはお客様から信頼していただけているおかげかなと感じています。

 

料理教室への想い~ご家庭でも作りやすく「もてなし」のヒント満載~

 

ー料理教室では「再現性の高い料理」を心がけているそうですね。

ご家庭でも作っていただきやすいよう、近くのスーパーなどで手に入る地元の旬の食材をなるべく使うようにしています。地産地消だけでなく、栄養価が高く安価に購入いただけるという理由もあります。

調味料もできるだけ身近で揃うものを使い、味付けは「引き算」思考で。なるべく使う種類を少なくして再現しやすいように心がけて献立を考えています。他には洗い物を減らす工夫など。ご家庭で再び作ってもらえて、ご家族にも「美味しい!」と言っていただけたら嬉しいですね。

 

ー参加の方々からはテーブルコーディネートも勉強になると好評です。

実際に教室のコーディネートでは、季節に応じた器使いや色使いを意識しています。料理そのものだけでなく、視覚から季節を感じられる技を知って頂けると思います。

例えばクリスマスなどの行事食や「おもてなし」は、特別な料理を作ることにこだわりすぎる時もあるかもしれません。けれど、普段の料理の盛り付けやテーブルコーディネートを工夫することで、気軽に楽しんで頂けるはず。そのためのコーディネートであり、あとは「相手を想う気持ち」が大切だなと思います。

 

ーこれまでに一番人気だったメニューは何ですか?

「焼きネギの土鍋ごはん」です。焼いたネギの甘さと油揚げの香ばしさで、身近な食材でも驚くほど美味しいご飯ができ、リピーター続出でした。

ネギならどこのスーパーでも購入いただけますし、土鍋ではなく炊飯器で炊く時のヒントもお伝えしました。ご家庭でも再現しやすいメニューだと、すぐにご家庭で作ってくださりコメントもいただけて嬉しいですね。

 

ーハーブや手作りみそなど、調味料にも工夫されていますね。

調味料は、食材のもつ個性をより美味しく引き立たせてくれて、味覚の世界を広げてくれる存在だと思います。自宅の庭で栽培したハーブを使ってハーブソルトを作るなど、素材から調味料を作り、料理に使用しています。

 

これまでのキャリアを振り返って~OLから料理の道へ~

 

―柵山さんといえば「料理講師」のイメージですが、実はキャリアスタートがOLさんだったとか。

そうなんです!私は学校卒業後、一般企業で事務職として働いていました。転機になったのは、働いて貯めた金で同期の友人と出かけたアメリカ旅行です。その時にグランドキャニオンを見たんですが、あまりにも壮大で。自分が知っている価値観と違いすぎて、自分が本当にちっぽけに見えました。

「人生一度限りなら、何かチャレンジしたい」

それがきっかけで、入社してまだ2年目でしたが「何か新しく学びたい」「手に職をつけたい」と思って再度学校に通おうと考えたんです。そこで私は「食」の道を選び、会社を辞めて専門学校に2年間通いました。

学校求人の中で、キユーピーが社会人経験の人材を求めていたこともあり入社しました。営業・企画で働きつつ、4年程の在籍中に管理栄養士の資格も取得。他の部署にも関心を持ち始めたんですが、本社転勤もあることを聞いて。そこから転職を考え、東邦ガスの料理の先生を紹介してもらいご縁をいただきました。

 

ーそこから個人事業主で料理講師の道へ。その背景は?

東邦ガス料理教室にて料理講師としてあらゆる経験をさせていただきましたが、出産を機に退職。その後、2009年から「chocomo(チョコモ)」という名前でマルシェを始めました。実は当時ハンドメイドにはまって、服や雑貨を作って物販していたんですね。料理の道は完全に諦めたので、全く別のことを。

好きな人たちを呼んで一緒にマルシェイベントを半年に1回(春と秋)、今でも楽しんでいます。そんな風にマルシェを楽しんでいた頃、東邦ガス料理教室から「戻ってこないか」と声がかかりました。

ただ、私は子ども3人の母ですし、昔のようには難しい。やり取りをするうちに「月1回でも」と言っていただけました。そこで子育てや主人の会社の事務、マルシェと並行しつつ、再び東邦ガスの料理講師やアシスタントを始めたんですね。

 

―まさに紆余曲折!そこから個人で?

そうですね。当時、一番下の子どもを保育園に預けていたころです。ママ友達と話していたら、唐揚げは唐揚げ用のお肉を買うから家では肉を切らないと…。衝撃でしたね笑。

そこから「自宅で教えてよ」って話になって。「個人事業主として起業して、教室をやる!」という意識はなく、話の流れで始まったんです。レッスン開催についてブログで発信したところ結果、口コミで20人程集まりました。

2013年の11月と12月、2ヶ月間同じメニューという今と同じスタイルで「おせち料理レッスン」を開催。これが「季節ごはん教室niwacoya」のはじまりです。

 

 

………後編へ続く。

(取材・構成) 杉本友美(ライティングファーム紡)
桑名市出身&在住。バックオフィスでの社会人経験ののち、ライターに転身。
働き方関連や三重などを中心としたライティングに携わる。
HP:https://www.wf-t.jp/  Instagram:@writingfirm.tsumugi