四日市市西浦にて夫婦で生花店「FlowerMarket花子さん」を営む古田理江さん。これまで無店舗営業の生花卸から大手スーパーへの出店、融合店、現在の路面店、さまざまな形で事業を続けていらっしゃいました。また、2000年代後半のマルシェ草創期から出店、運営と幅広く活動。

今回はコロナ禍で売上アップにつながった秘策から、マルシェと地域のつながり、今後の展望についてお話を伺いました。後編では、についてまとめています。

 

 

地域課題解決とマルシェ~運営側としての取り組み~

 

 

ー古田さんは四日市市でも早い段階からマルシェの運営を始めたと伺いました。

本格的にマルシェを始めたのは今から約12年前の2009年頃、大手スーパーを退店した後です。同じ頃、たまたま諏訪神社さんの活性化プロジェクトにお声がけいただきました。

また、ハンドメイド雑貨を販売していた女性たちが、フリマに商品を出しても安く買い叩かれるという悩みも聞いていました。それなら、マルシェでハンドメイドを販売して適正な価格で売ろう、諏訪神社さんでマルシェをやって盛り上げようという案が出たんです。

 

ーハンドメイドの方々はどこでご縁があったんですか?

今の店舗に移る前、四日市市にあるジャズ喫茶「VIEBO」で、昼間に花屋と雑貨の融合店を出店していたことがありました。その場所で昼間にパン屋を始めるオーナーから「隣で花屋さんをやってくれないか」と相談を受けたんです。

そこで雑貨も一緒に売ろう…ということで、ハンドメイド雑貨を置き始めました。それがきっかけでハンドメイドの女性と知り合って、悩みを聞いて。「ハンドメイド専門の市場があるといいよね」と話していたんです。

 

―諏訪神社でのマルシェがスタートなんですね。

諏訪神社のマルシェは、コロナ前まで毎月15日に開催していました。一番多い時には20店舗ほどの出店があって。当時は一気にマルシェが浸透していった一方、おしゃれなマルシェや有名なマルシェには新規の方が入れない時もありました。なので、新規の方が挑戦できる場所に、という気持ちもありましたね。

布雑貨、木工雑貨、パン屋さん、焼き菓子屋さんなど、三重県全域から出店者の方がいらっしゃって。私も多少出店したことがありましたが、一貫して運営に携わっていました。

これ以外に私は「やるっち倶楽部」という団体で「ナチュラル市場」というマルシェも運営していまして。そちらでは会員が最大130名程在籍していたこともあります。伊勢から桑名までさまざまな地域でマルシェを開催していました。

 

マルシェを事業に活かすコツ~Wiz:で学べることは?~

 

 

―マルシェの出店にあたり、工夫していることや重要だと感じることは?

私はこれまで、恐らく200回位はマルシェに出店したのではと思います。細かくは何回出店したかわからないほど笑。出店した度に気づいたことを、次の出店時にどんどんアウトプットしていきました。

まず私は、基本的に「マルシェは売上を立てる場所ではない」と思っていて。時には売上を目指していくこともありますが、ほとんどの場合、自分を売る「広告宣伝の場」だと思っています。

 

―マルシェは、自分を知ってもらい、自分を売る場。

そして、商品について直接お客様から話を聞けるのもマルシェならでは。それまで自分では気づかなかった新発見がありますから。私の場合、自動車販売店、保険屋、保証協会、社協、生命保険会社といった事業者様からのワークショップ案件はすべてマルシェからのご縁なんです。

マルシェの出店時にその事業者様や担当者様が見つけてくださったり、マルシェ出店時の話を聞いて、店舗へワークショップのご相談にお越しいただいたり。マルシェを通じて企業・人とのつながりが広がっていきました。

ちなみにワークショップでは、例えばユーカリのリース作り、ハーバリウム、ドライフラワーのミニブーケ作りなど。他には、季節に合わせてしめ縄作りやクリスマスリース作りなども企画、開催させていただいています。

 

―Wiz:でマルシェ、ミニマルシェ、チャレンジショップ出店者向けの勉強会の講師を担当していらっしゃいますね。

マルシェって、目的を持って臨んでいかないと何の意味もないんです。特に初めて出店する時には、数多くの出店者の中でお客様が自分を目指して来てくれるわけでもありません。

けれど、例えば「自分を宣伝しよう」「この商品をみんなに見てもらおう」「アンケートを取ってお客様情報を得よう」とか。自分がどんな目的でマルシェに出店するのかをきちんと考えておくと、マルシェに出店した後の効果が全く違うんです。

また、どんなマルシェかによっても戦略が変わってきます。時には単発のお客様で終わるマルシェもある。それなら単発で売れるお客様用の商材を用意していかなければなりません。次につながるお客様を獲得したいなら、次につなげるような仕組みを知らないといけないですよね。

どんなマルシェに参加したとしても、毎回同じようなことをやっていては意味がないと思います。それに「マルシェに出店したら売れる」「全然売れないのはマルシェの質のせい」とかではなく、自分がどれだけそのマルシェについて把握しているのか、マルシェに対する向き合い方がとても大切だと思いますね。

 

ーちなみに実店舗の出店経験がなくても勉強会に参加できますか?

もちろん!今は売上もない段階でいきなり店舗から作ってお店を始めようとする人も多いんですが、まずはマルシェから始めてみてはどうかなと思います。

初出店の時は広告宣伝費のつもりで、自分を知ってもらうところから。例えばチラシを作って配布するだけでも数万円かかりますよね。マルシェなら出店料が数千円で済むものもありますし、自分が自ら直接お客様に宣伝することができます。

 

―コロナの影響でライフスタイルも大きく変わりました。今後のマルシェと地域のあり方についてどうお考えですか?

少しずつですが、地域もマルシェを欲しているように感じますね。例えば飲食関係でも、キッチンカーのニーズは高まっています。

マルシェって、開催しようと思えばできる場所はいくらでもあると思うんです。だからもし「経験が少なくて参加できるマルシェがない…」となった場合、仲間で運営、主催して出店することもできる。誰でも運営側になれると思います。

もちろん場所を借りるためのお金は必要ですが、公園などの屋外をはじめ、コロナが落ち着いてきたら体育館や行政関連のホールなどもアリですよね。コロナの影響でここ1年くらいはマルシェの休止も相次ぎましたが、まだまだマルシェが衰退することはない。むしろこれからどんどん新しく変化していくのではないでしょうか。

 

今やフラワーも「アート」の時代~ハーベストタイムを楽しみながら~

 

 

ー今年は古田さんにとってどんな年?

今年の私のテーマは「アート」なんです。これは私だけが「アート」と思っているわけではなく、時代もアートだと感じます。今は、既存の商品でもパッケージデザインを大きく変えて、すごくおしゃれになった商品がたくさんあります。例えばシャンプーやリンス、缶チューハイなど。

そしてデザインに加え、SDGs視点で素材に配慮しつつゴミにならないような対策もしていますよね。今は「聴覚よりも視覚、味覚よりも視覚」を戦略で考えている企業が多いように感じます。

そういう背景もあって、なぜ今こんなにドライフラワーがバズっているかというと、ドライフラワーがインテリアの「アート」として受け入れられているのではないでしょうか。コロナの影響もあって、室内を綺麗に整えたい人、テレワークでオンライン時の背景を飾りたい人、そんな方々がたくさんいらっしゃると思います。

 

―ドライフラワーの人気はまだまだ続きそうですね。

そうですね。実はこの1年間、私は生花でブーケを作ったことがなく、全部ドライフラワーなんですよ。今やウエディングシーンでもかなりドライフラワーの割合が高まってきています。高砂のお花も披露宴会場も、待合まで全部ドライフラワーというカップルも増えているんです。

もちろんドライフラワーの質も、ただ加工しただけではなくて、着色したりプリザーブドフラワーとドライフラワーを組み合わせたものだったり、多種多様。今年のゴールデンウィークも結婚式のブーケをたくさんご依頼いただき、毎日ドライフラワーでブーケを作っていました笑。

 

―今やブーケもドライフラワーなんですね!

私のInstagramを見てくださって「ドライフラワーのブーケが欲しい」とご連絡いただくんです。で、よくよく聞くと皆さんかなり延期されていて。これ以上延期できず、ゴールデンウィークに式を挙げた方が結構いらっしゃいました。

それを踏まえると、コロナの影響で結婚式の予約もしていないカップルがいらっしゃるはず。なので、先を見越してドライフラワーのブーケに力を入れようかと考えています。

ドライフラワーの大きなメリットは、前日や当日納めではなく、もっと前に作っておけること。自分で時間を調整できますし、しっかり時間をかけることもできます。今はドライフラワーのブーケのネット販売も検討しているところです。

 

―「FlowerMarket花子さん」の今後はどのような展開を考えていますか?

あと少しはドライフラワー人気が続くかな。その後はどうだろう…私、割と感覚だけでいくタイプだから笑。

実は5年ほど前、会社名を「有限会社花子さん」から「有限会社HARVEST TIME」に変更したんです。従業員が退職して自分で店を出し、従業員ゼロで夫婦2人になるタイミングでした。

HARVEST TIME(ハーベストタイム)は「収穫する」という意味があります。夫婦で話し合って「今後は収穫期やな」ということで名づけました。今まではいろんなことを広げてきたけれど、今後は自分たちが好きなことを好きなように楽しんでやっていける商売にしようと思って。

私たち夫婦は子ども2人も成人して独立して、子育ても一応一段落しましたから。自分たちが楽しんでできることを、これからも続けていきたいですね。

 

 

 

(取材・構成) 杉本友美(ライティングファーム紡)
桑名市出身&在住。バックオフィスでの社会人経験ののち、ライターに転身。
働き方関連や三重などを中心としたライティングに携わる。
HP:https://www.wf-t.jp/  Instagram:@writingfirm.tsumugi